公的機関の役割

離婚に関連する公的機関の役割についてまとめていますので参考にしてください。

市区町村役場
裁判所
家庭裁判所
地方裁判所
高等裁判所
最高裁判所
公証役場
法務局
年金事務所
子ども家庭センター
女性センター
警察

市区町村役場

市区町村役場

離婚するときに最も関連性が強いのは市区町村役場です。ご存知のとおり、全国の市区町村に設けられています。

市区町村役場では、住民の戸籍や住民表、実印登録などの基本的な管理や税金、健康保険、福祉制度などの運営が行われています。

日本では、離婚する夫婦の90%以上が「協議離婚」の形で離婚します。協議離婚とは、夫婦が話し合いをして自分たちで離婚条件を決めて離婚をする方法です。

そして、協議離婚をするときには、市区町村役場において「離婚届」の用紙をもらい、その用紙に夫婦それぞれが署名押印して提出しなければなりません。

また、市区町村役場では、戸籍の管理をしています。そこで、離婚後に実家の戸籍に戻るのか、新たに戸籍を作るのかなどを選択し、届けを出さなければなりません。子どもの籍を自分の戸籍に移す手続きなども市役所で行います。

離婚にともなって引っ越しをすることも多いですが、その場合には住民票の異動も必要です。国民健康保険に入ることなどもありますが、このような手続きも市役所で行います。

また、離婚後生活保護を受けることもありますが、その相談や審査、手続きなども市区町村役場において行われます。

さらに、離婚前には、弁護士などの専門家に相談をしたいと考えることが多いですが、市役所では毎月定期的に弁護士による無料法律相談を実施しています。そういったサービスを利用して、離婚についてのアドバイスを受けることもできます。

裁判所

離婚の際に関係する公的機関としては、裁判所も重要です。自分たちで話し合って合意することができない場合、裁判所の手続きを利用して手続きを進める必要があるためです。

裁判所には、いくつかの種類があるので、以下では離婚に関係が深い機関から順番に解説していきます。

家庭裁判所

家庭裁判所

離婚と最も関係が深い裁判所は、家庭裁判所です。家庭裁判所は、夫婦や親子の問題、親族関係の問題を広く取り扱う裁判所です。

離婚問題や遺産相続問題、遺言書に関する手続きや成年後見人に関する手続きなどは、すべて家庭裁判所の管轄です。全国の都道府県にあります。

家庭裁判所で行われる離婚に関連する手続きは、以下のようなものです。

・夫婦関係調整調停(離婚調停)
夫婦関係調整調停は最も重要です。これは、世間一般では「離婚調停」として知られています。夫婦が家庭裁判所において、離婚することやその条件を話し合って決める手続きです。離婚調停によって夫婦が合意できたら離婚が成立します。

・養育費調停、審判
離婚時に子どもの養育費の金額を定めなかった場合や、離婚後に養育費の金額を決め直したい場合には、家庭裁判所において養育費に関する調停を行うことができます。

養育費を求める養育費調停、増額を求める養育費増額調停、減額を求める養育費減額調停があります。

調停委員が間に入ってもお互いに合意ができない場合、裁判所が「審判」によって、ケースごとに妥当な養育費の金額を決定してくれます。

・財産分与調停、審判
離婚時に財産分与の取り決めをしなかった場合には、離婚後に財産分与の請求をすることができます。その期限は、離婚後2年間です。

財産分与に関しても、当事者同士が話合いで決められない場合は、家庭裁判所で財産分与調停をすることで解決につながります。

財産分与調停では、調停委員に間に入ってもらって話し合いをすすめますが、それでも合意ができない場合、やはり「審判」によって裁判所が財産分与の方法を決めてくれます。

・面会交流調停、審判
離婚する夫婦に未成年の子どもがいる場合、子どもと親権者にならなかった親との面会交流権が認められます。

離婚時に面会交流の方法を取り決めなかった場合や、離婚後に面会交流の方法を変えたい場合、相手が約束を守ってくれない場合などには、家庭裁判所で面会交流調停をすることができます。

ここでも、調停委員に間に入ってもらって話合いをすすめますが、話合いで合意ができない場合、やはり審判に移行して、裁判官が面会交流の方法を決めてくれます。

・子の引き渡し、監護者指定の調停、審判
離婚するとき、親権者争いが発生することがありますが、そのようなケースでは、当事者の一方が子どもを連れ去ってしまうことがあります。その場合、連れ去られた方の当事者は、相手に対して子どもの引き渡しを求めることができます。

また、離婚前に子どもを監護すべき「監護者」を家庭裁判所に指定してもらうことも可能です。

このような、子の引き渡しや監護者指定の手続きは、当初は調停として申し立てます。しかし、話合いで解決ができない場合、家庭裁判所が「審判」によって、子の引き渡しを認めるかどうかと、離婚までの子どもの監護者を定めてくれます。

・離婚訴訟
家庭裁判所では、離婚訴訟も行われます(第一審)。

離婚するとき、まずは協議離婚、ダメなら調停離婚、それも無理なら裁判離婚、という流れで進んでいくことが多いですが、離婚訴訟は裁判離婚するために必要な手続きです。

以前は離婚訴訟は地方裁判所で行われていましたが、人事訴訟法の改正により、第一審は家庭裁判所で行われるようになりました。そこで、離婚調停が不成立になったとき、裁判で離婚したいなら、家庭裁判所で離婚訴訟を起こさないといけません。

訴訟において主張と立証をして、自分の主張が認められたら、希望する内容で離婚をすることができます。

反対に、主張と立証に失敗すると、思ったような条件での離婚をすることができないので、訴訟で有利になるためには、腕の良い弁護士に依頼する必要があります。

地方裁判所

地方裁判所は、家庭裁判所と同様、全国の都道府県に存在します。

離婚の際、地方裁判所が関係することは意外とあります。

まず、DV事案では、相手が近づけないように「保護命令」を出してもらうことができますが、保護命令の申立先は地方裁判所です。

また、相手が不貞(不倫)しているとき、不貞相手に対して慰謝料請求をするには地方裁判所で第一審の訴訟を行います。不倫相手単独を相手にする場合、離婚前の請求でも離婚後の請求でも裁判所の管轄は地方裁判所です。

離婚後に元配偶者に対して慰謝料請求をするときにも、第一審は地方裁判所になります。離婚後に慰謝料請求ができる期間は、離婚後3年間です。

なお、離婚前の配偶者に対する離婚訴訟は家庭裁判所ですが、ここで不倫相手も合わせて被告にして慰謝料請求をすることができます。この場合には、離婚訴訟の中での手続きになるので、不倫相手に対する慰謝料の審理も家庭裁判所で行います。

高等裁判所

高等裁判所は、全国の大都市8箇所に存在しています。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の8つです。それぞれの管内の地方裁判所や家庭裁判所、簡易裁判所の事件を統括しています。

高等裁判所は、第2審の裁判所です。第2審の裁判所というのは、「控訴」を取り扱うということです。

離婚訴訟を起こしたとき、必ずしも自分の納得がいく内容の判決が出るとは限りません。そこで、判決に不服があるときには、控訴して、別の裁判所に判断してもらうことができます。このときの控訴の宛先が高等裁判所です。

また、養育費の審判や財産分与の審判、子の引き渡しの審判などの各種の「審判」に対しても、不服申立をすることができます。この場合の方法を「即時抗告」と言います。

高等裁判所では、これらの控訴や即時抗告などの不服申立事件を取扱い、再度判断をします。第2審では第1審とは別の裁判官が担当するため、判断が変更されることもありますが、されないこともあります。

最高裁判所

最高裁判所で離婚に関する判断がなされると、それがモデルケースとなってそれ以降の事件での解決の指針となるので、最高裁判所の判断は非常に重要です。

ただ、一般の離婚事件において、最高裁判所が関与することは、ほとんどありません。

日本では3審制が採用されているので、第1審と第2審に不服がある場合、一応最高裁判所に上告することができます(正確には上告受理申立という手続きもあります)。

ただ、普通の離婚事件では、最高裁判所で実質的な判断をしてもらえることがほとんどありません。

最高裁判所で審理をしてもらえるのは、憲法違反や法令違反などの重大な問題がある場合に限られるため、「事実認定が間違っている」というレベルでは再審理してもらうことができないためです。

離婚事件で上告や上告受理申立をしても、ほとんどのケースで「上告理由がないから受理しない」という一文が書かれた紙が送られてきて、終わってしまいます。

離婚をするときには、実質的に高等裁判所での審理が最終と考えるべきです。最高裁では和解の機会も与えられないため、相手と話し合いによって解決するチャンスも裁判所が最終となるので、その点に留意しながら離婚裁判を進めましょう。

公証役場

公証役場は、法務局に所属している機関で、全国の約300箇所に点在しています。利用するときには自分の一番使いやすいところに行けば足ります。

公証役場では、法務大臣に任命された公務員である「公証人」という人が業務を行っています。

具体的には、公文書である公正証書を作成したり、民間の人が自分で作成した私文書を公証人が認証したり、会社設立の際に必要となる定款認証の業務などを行っています。

離婚の際、特に重要になるのは「公正証書」です。公正証書とは、公証人が作成する公文書のことで、非常に信用性や証明力が高いです。

協議離婚の場合には、夫婦が話し合って取り決めた条件について「協議離婚合意書」を作成することが多いです。

ただ、協議離婚合意書を作成しても、その後相手がそれに従った支払いをしてくれるとは限りません。養育費などについては、不払いになることが非常に多いことも知られています。

ここで、協議離婚合意書を公正証書にしておくと(「離婚公正証書」と呼ぶ)、相手が支払いをしないときに、すぐに相手の財産を差し押さえることができます。

もし公正証書がなければ、いちいち養育費や財産分与の調停、慰謝料請求訴訟などをしないといけませんし、その間に相手に財産隠しをされてしまうおそれがあります。

しかし、離婚公正証書を作成しておけば、その手続きを省くことができるので、メリットが大きいです。

協議離婚をするとき、相手に何らかの支払いをしてもらう内容が含まれていたら、相手を説得して協議離婚合意書を公正証書化しておきましょう。

法務局

法務局は、日本全国の主要8箇所に置かれている機関ですが、それ以外にも全国の都道府県の42箇所に「地方法務局」が置かれています。

さらに細かく法務局の出張所や支局などもあるため、全国にはたくさんの法務局関連施設があり、その数は500箇所にもなります。

法務局では、登記関係の取扱を主に行っています。

具体的には、土地建物などの不動産に関する登記業務、会社その他の法人登記などです。無料で法律相談や人権相談なども行っており、離婚の際にもこうした無料相談を利用することができます。ただし、出張所では、これらの業務のうち、一部しか取り扱っていないことが多いです。

離婚の際に法務局が大きく関わるのは、不動産登記業務です。

財産分与が問題になることが多いためです。財産分与では、夫婦が共同で購入した自宅や投資用の物件などが財産分与の対象になります。そのとき、不動産の資料として不動産の全部事項証明書などの取得が必須となりますが、それを取り寄せられるのは法務局です。

また、離婚の際に不動産の財産分与を受けたら、それを原因として、対象の不動産を自分名義に変更しなければなりません。この場合、その不動産を管轄する法務局に行って、不動産の名義変更のための登記申請をする必要があります。

法務局で財産分与を原因とする登記申請をして、それが問題なく受け付けられたら不動産の名義を自分に変更してもらうことができ、登記識別情報(昔の不動産権利証)も渡してもらうことができます。

せっかく財産分与を受けても、登記変更をしないといつまでも相手の名義になっていて、悪用されてしまうおそれもあるので注意しましょう。

年金事務所

年金事務所

年金事務所は、厚生年金や国民年金などの年金を管理する機関で、全国に312箇所あります。その業務の一部を担うため、書類の管理や審査などを行うための年金事務センターも全国に配備しています。

離婚の際に年金事務所が関わるのは「離婚時年金分割」のためです。離婚時年金分割とは、会社員や公務員が離婚するときに、婚姻中に支払った年金保険料について、配偶者と分け合い、年金を按分する制度です。

わかりやすく言うと、離婚する相手が会社員や公務員の場合、将来受けとることができる年金を相手から少し分けてもらうことができる手続きです。

離婚時年金分割を受けるためには、年金事務所での手続きが必要です。まずは、「年金分割についての情報通知書」という書類を申請して取得する必要があります。

その上で、公正証書や調停、訴訟などによって年金分割することとその割合を決定します。

その書類を年金事務所にもっていけば、年金分割ができます。離婚後に夫婦が一緒に年金事務所に行って、年金分割の手続きをすることもできます。

平成20年4月以降の年金分だけしか問題にならない場合には、3号分割ができるので、相手が協力しなくても、離婚後1人で年金事務所に行って年金分割の手続きをすることができます。

子ども家庭センター

子ども家庭センター

子ども家庭センターは、児童相談所と呼ばれることもあります。配偶者による暴力支援センターを兼ねていることもあり、組織構成については各自治体によって異なる部分があります。

子ども家庭センターでは、子どもに関わる問題全般を取り扱っています。

たとえば、子どもの不登校や子どもへの虐待問題、発達障害や、子供を育てられない場合の相談などをすることができます。

また、里親制度も実施しており、身寄りのない子どもと里親とのマッチング業務も行います。

虐待を受けている子どもを親権者から引き離して保護したり、身寄りのない子どもを児童相談所内で生活させたりすることもあります。

離婚の際、特に小さい子どもがいる場合には、子どもの親権や養育方法について問題が発生することが多いです。このような場合、子ども家庭センターや児童相談所で相談を受けることができます。

親同士がもめて子どもの精神状態が悪化したときなどにカウンセリングを受けることもできます。また、離婚後どうしても子どもの養育ができなくなったとき、子ども家庭センターに相談をして里親を探してもらったり、保護してもらったりすることもできます。

相手が虐待していると思われるときには、児童相談所に通報をすることにより、対処してもらえるケースもあります。

女性センター、婦人相談所

婦人相談所や女性センターは、女性の問題についての相談やカウンセリングを実施している機関です。

婦人相談所は、もともと売春している女性や、売春するおそれのある女性からの相談や指導、一時保護などをしていました。

最近では、DV問題が増えてきたことや配偶者暴力対策法ができたことなどもあって、DVやモラハラなどを受けている被害女性の支援を主にしています。

全国の都道府県ごとに、最低1箇所設置することが義務づけられています。

もう1つが女性センターです。一般には、婦人相談所よりも、女性センターの方がなじみ深いかもしれません。女性センターは、各自治体が自主的に設置しているもので、女性を支援するための総合施設です。

全国の45の都道府県、281の市区町村内に設置されていて、名称は、「男女共同参画センター」や「ドーンセンター」、「男女平等推進センター」など、さまざまなものがあります。

DVを初めとした夫婦間の問題や子どもとの関係性の問題、母子家庭の問題など、広くどのような問題も取扱います。

離婚するときには、これらの施設で各種の相談をすることができます。

たとえば、DVを初めとした夫婦問題、子どもの育て方や親権についての相談、離婚後に自立して生活していく方法について相談をしてアドバイスをもらうことができます。

また、自分や子どもが保護施設に入所するための相談や判断、決定などもしてもらうことができます。

警察

警察

主にDVのケースで、警察にも関わってもらうことがあります。

酷いDVが起こっていて身に危険が及びそうなケースや、実際に酷いけがをしたケースなどでは、警察にDVについての相談をすることができます。

相手の行為の違法性が高い場合、傷害罪や場合によっては殺人未遂罪が成立するので相手を逮捕してもらえる可能性もあります。

また、その程度に至っていない場合でも、DV事案では本人が家から出て保護施設などに入所することが多いですが、その際、相手が追いかけてこないように、「保護命令」という命令を出してもらう必要があります。

保護命令自体は、裁判所の項目で説明したように、地方裁判所が下す命令ですが、保護命令を出してもらうためには、事前に警察にDV相談をしている必要があります。

そこで、DV事案で相手の手から逃れて保護施設に入居したい場合には、まずは警察にDV相談をします。その後弁護士に相談に行くか自分で手続きをすることによって地方裁判所で保護命令の申立をして、裁判所から保護命令を出してもらう必要があります。

保護命令が出ると、相手は配偶者に近づいてはいけないことになり、それを破ると相手は逮捕されます。直接の面会だけではなく電話やメールも禁止してもらえますし、自分だけではなく子どもや親族に対する接触も禁止してもらうことができます。

保護命令の申立について、女性センターの人に援助してもらうこともできるので、困ったときには我慢せずに相談に行きましょう。弁護士もDV被害女性の援助に積極的に取り組んでいる人が多いので、勇気を出して相談の申込をすることをおすすめします。

以上のように、離婚するときには利用できる公的機関がたくさんあります。

こうした機関を上手に活用すると、離婚を有利にすすめることができます。離婚全般のアドバイスを受けるためには弁護士に相談する方法が有効なので、迷ったときには一度弁護士に相談することもおすすめします。